オーダースーツ専門店 “Peperoncino-SARTO"

スーツの良し悪し(縫製編)

今回からはスーツ選びのヒントとなるような、更に細かい 「スーツにおける良し悪し」 に関してのお話をさせていただこうと思います。

今回まずは 「縫製」 に関してのお話からのスタートです。

 

 

 

「このブランドは縫製が良い」とか「あそこの商品は縫製がイマイチで・・・」などというフレーズ、一度はどこかでなにかで耳にしたことがおありかと思います。

ですがこの 「縫製の良し悪し」というものが具体的にどういったことを指すのか?

これをきちんと説明できる方は意外と少ないのではと思います。

 

 

「縫製」 というのは取りも直さず「(糸で)縫う」ことを指しますが、この「縫う」という工程において、スーツの縫製では一種独特の技術が求められます

もちろんレディースを始めとしたカジュア製品においても、縫製における技術というのは非常に重要で高い技術を要求されることもしばしばですが、スーツの場合はそれらとはまた少し違った意味で 「独特の縫製技術」 が求められます。

 

 

スーツの縫製(組み上げ)は、 「構築する」 という表現を用いられることがあります。

これは、芯地やパッド・裏地などを用いて 「立体的にスーツを仕上げる」 という意味合いで使われます。

余談ですが、最近良く耳にする 「アンコンジャケット」 という物がありまして。これは非構築・脱構築という意味の「アンコンストラクト(Unconstruct)」なジャケット、要するに芯地や肩パッドを用いずに(構築せずに)縫い上げたジャケットのことを言います。

 

逆に言うと、そうでないジャケットはすべて 「構築」 されているということになりますね。

 

 

 

この「構築」という言葉が示すとおり、「立体的に(三次元的に)、一定の形状を保ように縫い上げられた物」 “構築されたジャケット” ということになります。

 

 

平面に織られた生地(織物)を曲げて伸ばして切り目を入れたりしながら縫い上げることで、人間の体に沿った立体構造を作り上げる。

これがジャケットを 「構築する」 ということになります。

 

ここが他の衣服の縫製と決定的に違う点で、ジャケットにおける縫製ではこの「立体的に縫い上げる」という技術が必要不可欠となります。

 

スーツの縫製ではこの 「構築」 が、出来の良し悪しに関して非常に大きなウエイトを占めるのです。

 

「構築的」 とは、主に肩周りの縫製で用いられることの多い表現ですが、実は脇腹部分にもその特徴を見ることができます。

「アワーグラス(砂時計)」 と例えられるこの脇腹部分。
ダーツを取り、芯地と表地を縫い合わせ、アイロンで曲げと歪みをつけることで、このような立体的な形状を作り上げます。

丸みを帯びた曲線が美しく生み出されているのがお分かりいただけるかと思います。

 

 

次に前身頃肩の部分。

画像では分かりづらいかもしれませんが、カラーのノッチ部分のちょうど裏側あたり(黄色のバツ)が窪んでおり、肩先から前方に少し入った部分(オレンジのバツ)が盛り上がるように作られています

 

 

こういった 「立体的な曲面」 「構築する技術」 というものがスーツの縫製にとって不可欠となります。

 

 

他にも 「袖付け」 の部分では、こんもりと盛り上がった袖山に「構築」が見られます。

 

 

肩の頂点に近いところでは上に向いた山が、脇に近いところでは前方に向かって、回り込むように生地が盛り上がっています

 

 

 

これが 「いせ込み」 と呼ばれる技法で、ジャケットの肩周りの着心地に非常に重要な役割を持つ縫製技術です。

肩の取り回しに十分な余裕を生み出す技法で、ここがまさに袖付けにおける職人の腕の見せ所となるわけです。

 

 

 

こういった、シルエットや着心地を良くするための技術もそうですが、より「見た目寄りの技術」としては 「柄合わせ」 というのも大切な技術の一つです。

 

 

 

前身頃と細腹(脇腹部分のパーツ)はもちろん、ポケットの雨蓋や袖ともピッタリと横の縞が揃っています

一見なんでもないように見えるかもしれませんが、3次元でこの縞模様をピタリと合わせるためには、非常に手間のかかる工程を惜しげもなく費やさねばなかなかこうはいきません。

 

その細かい技法に関しては・・・、

 

 

機会があればお話させていただくこともあるやもしれません。

ご来店いただければ、丁寧にご説明させていただきましょう!(笑)

 

 

 

「ミシン目がまっすぐ」「糸がほつけてこない」あるいは「手縫い」などなど。

こういったことももちろん「縫製の良し悪し」ではあるのですが、それとは別にこの 「構築」 という部分での仕上がりのクォリティ。

 

これらを以って「スーツにおける縫製の良し悪し」を判断するということになります。

 

 

 

あなたのお持ちのスーツはいかがでしょうか?

 

「見た目」「シルエット」「着心地」 などなど。
これらに直結する「縫製」に関するあれこれ

 

 

これにてご理解いただければ幸いです。

 

(※参考として写真に用いたジャケットは、店主私物のフルオーダーのジャケットです)